平成29年6月25日(日)14:00-16:00(開場13:30))
大阪国際会議場(グランキューブ大阪)12F 特別会議場
〒530-0005 大阪市北区中之島5丁目3-51
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日本人の平均寿命は1947年に50歳を越え、その後66年間に2年に1歳ずつ延びた。緩徐な増加のために、私たちの社会システムは、医療を含めて、この変化に気づかずに現在に至った。寿命50歳時代の私たちは、「一生の終わり頃」の「一時期」に「一つの疾患」を患い、疾患が治れば生き、治らなければ死んだ。すなわち、医療は「疾患」を「治療」しさえすればよかった。当時の歯科も、患者は全身疾患を有さないことで通院できる人であり、栄養摂取を妨げる歯科疾患の治療や義歯の作成だけで当時の社会的課題であった低栄養の改善に対応できた。
長寿化した現代の私たちは「一生」に「何度」も「複数の完治していない疾患」を有するようになった。すなわち、治っていない疾患のために不自由な生活になり、リハビリテ-ションやケアによる生活参加の支援を必要とするようになった。その結果、全身状態に応じて様々な生活環境が提供されるようになったが、経口摂取に向けた支援は共通して求められている。その背景は、長期の非経口摂取や軟食の摂取に伴った消化管の廃用化により生じた栄養吸収機能の低下が原因の低栄養によって日常生活が困難になることにある。
一方、口から食事を摂ることによって消化管の廃用化が防止されることから、その重要性が認識されるようになったが、加齢による身体機能の低下や全身疾患の合併症等によって安全に経口摂取することには特別の配慮も必要になっている。情緒的にQOLの向上として、闇雲に口から食事を摂った場合には誤嚥性肺炎や窒息事故のリスクも高まることや水分摂取時にむせることで水分摂取をためらうことでの脱水やそれが重度になることで譫妄状態に陥ることもある。
本市民フォーラムでは、安全に口から食事を摂るための要件と日常生活での実践方法について紹介したい。
高齢者が要介護状態となる要因の一つとして低栄養状態が考えられる。低栄養状態は、免疫力低下による感染症の誘発、日常生活動作の低下や生活の質の低下を引き起こす。高齢者の健康や生活の質は、適正な栄養摂取が強い影響を与えると考えられ、健康寿命を維持し、自立した生活を送り続けるためにも、食生活が重要な課題であると考えられている。また、多様な食品を摂取することの大切さは、2000年に策定された「食生活指針」、「高齢者のための食生活指針」においても提唱されている。
多様な食品を摂取することが在宅高齢者の高次生活機能の自立性の低下を予防することを示した先行研究から、多様な食品を摂取している人ほど、肥満や痩せが少ない、運動習慣がある、生活を楽しいと感じている人が多いという特徴もある。また、趣味を有することが、健康度自己評価が高い、高次生活機能の維持の寄与が高い、生活満足度が高い、握力が高いと示されている。
今回、我々の調査結果から、多様な食品を摂取している者は、体力測定値(特に下肢)、意識両面において有意な差がみられ、高次生活機能の自立性の低下予防になると示唆される結果であった。 まだ自立生活が十分営める壮年後期から、多様な食品を多様な調理方法で摂取することを心がけることが、高次生活機能の自立度低下予防に繋がるのではないかと推察される。
超高齢社会となり高齢者のいる世帯が4割といわれその半数を独居あるいは老夫婦世帯が占めている。食事を作ることができないで総菜を買ってくる人が多くなり、宅配食を利用していても食べるものが限られたり嗜好の変化から栄養の偏りが見られる。
又、口腔乾燥や誤嚥、逆流性食道炎、薬の副作用などから食欲の低下が見られ体力や筋力の低下を招き、いわゆる健康障害を起こしやすい「フレイル」という状態になりかねない。さらに認知症も併発すると火の管理も危険であるし、食品の衛生管理も重要な問題になる。
希薄な家族関係も多くコミュニティ内の相互理解の不足もあり今後の高齢者の食と健康を考える上でどのような工夫が必要か、そしていかに老化を防ぎ健康寿命を延ばすかが重要である。
今回は最近注目を集めている「AGE(終末糖化産物)=タンパクと糖が加熱されてできた物質で老化を進める原因物質といわれている」についてもふれ、食生活から考えるアンチエイジングについてお話ししたいと思います。